一口すすると、舌の上に広がるのは角のない丸みを帯びた旨味。そして鼻腔へと抜ける芳醇な薫り。これぞ、何世代にもわたって磨き上げられてきた「上方日本料理・出汁文化」の精華だ。
濃口醤油と強い鰹節でパンチを効かせる関東風のつゆとは対照的に、道頓堀今井の出汁は驚くほど澄み切っている。ベースを支えるのは、北海道道南産の天然真昆布。そこにウルメ節、サバ節、メジ節を絶妙な比率で合わせ、厳選した薄口醤油とみりんで調える。素材の良さに甘えることなく、毎朝職人が気温や湿度を見極めながら火入れを微調整する妥協なき作業が繰り返されている。
特筆すべきは、出汁を大鍋で作り置きしないという鉄の掟だ。株式会社道頓堀今井では、出汁の命である鮮度と香りを保つため、一日に何度も小さな鍋で必要な分だけを引き直す。時間が経てば酸味が出て香りが飛ぶ。そのわずかな劣化すら許さない職人の矜持が、最後の一滴まで飲み干したくなる黄金色のスープを生み出している。