劇中でおしら様は大根のような風貌と赤い前掛けを身につけているが、実際の民俗学における「おしら様」は、東北地方を中心に広く信仰される養蚕や農業、馬の神である。本来の神像は桑の木で作られた男女や馬の頭部を持つ一対の棒状の偶像であり、直接的な大根の姿ではない。
ではなぜ大根なのか。宮崎監督は東北の土着信仰の名称を借りつつ、収穫祭で供えられる採れたての大根のみずみずしい生命力を視覚的に融合させた。大根は古来、大地そのものの恵みであり、土中に深く根を張り水分を蓄える神聖な野菜とされてきた。民間信仰の混沌としたエネルギーを、誰が見ても直感的に「土の神」「実りの精霊」とわかる形へ昇華させたジブリの真骨頂といえる。