ろくさん亭の料理を語る上で欠かせないのが、徹底的に鍛え上げられた基本の「ダシ」の強靭さだ。昆布と鰹節から抽出される黄金色のスープは、一口すするだけで五臓六腑に染み渡る深みを持つ。この揺るぎない土台があるからこそ、意外性のある食材との組み合わせが完璧な調和を生み出す。
季節ごとに刷新されるお品書きには、旬の魚介や野山の実りが散りばめられている。春の芽吹き、夏の清流、秋の豊穣、冬の静寂。手書きでためやかにしたためられたお品書きを眺める時間から、すでにエンターテインメントは始まっているのだ。伝統的な懐石料理の順序を守りつつも、次に出てくる一皿の予想が良い意味で裏切られる感覚は、ここでしか味わえない醍醐味と言える。