物語の核をなすのは、穏やかな温泉街の裏で密かに絡み合う予測不能のサスペンス構造だ。一枚の古い絵画と失踪事件を巡り、登場人物たちの秘められた過去が静かに紐解かれていく。静謐な叙情性と緊迫したミステリーが完璧な均衡を保ち、観る者を一瞬たりともスクリーンから目を離させない。
ここでファン必見の秘蔵エピソードを明かそう。クライマックスシーンの撮影時、役所広司のアドリブによって台本にない10分間もの長回し演技が繰り広げられた。撮影が終わった瞬間、静まり返っていた現場は割れんばかりの拍手に包まれ、是枝監督も思わず目頭を押さえたという。現場の熱量がそのまま映像に刻み込まれていることは疑いようもない。