ホッピーの物語は、戦後間もない1948年に始まる。物資が困窮し本物のビールが庶民の手に届かなかった時代、ホッピービバレッジ株式会社(当時はコクカ飲料)が世に送り出した麦酒様清涼飲料水は、瞬く間に労働者たちの喉を潤した。その後、経済成長とともに一時は勢いを落とすかに見えたが、同社の舵を取る石渡美奈社長による大胆なブランド刷新とデザイン戦略によって、若者や女性をも巻き込む一大ブームを巻き起こす。
カルチャーとしての定着には、メディアの存在も欠かせない。『吉田類の酒場放浪記』で描かれる風情ある呑みっぷりは、視聴者に「ホッピーのある風景」の心地よさを強烈に印象づけた。さらにTBSラジオをはじめとする番組での軽妙な発信やタイアップを通じて、大衆居酒屋のアイコンとしての地位は不動のものとなったのである。昭和のノスタルジーと現代の洗練が同居する不思議な魅力が、ジョッキの泡の中に息づいている。