一方、日本の中心・東京において静謐な威厳を放ち続けているのが皇居 伏見櫓だ。皇居前広場の二重橋越しに望むその優美なシルエットは、国内外の観光客にとって東京を象徴する景観として広く親しまれている。
宮内庁の厳重な管理のもとで守り継がれているこの櫓もまた、伏見城から解体移築されたとの伝承を背負う。三代将軍・徳川家光の時代、江戸城の防衛と権威付けのために配置されたとされ、白漆喰総塗籠の優美な壁面と整然と並ぶ千鳥破風が、近世城郭の到達点を物語る。
普段はその内部に立ち入ることは叶わない。だが、皇居の濠を渡る風に揺れる水面越しに眺めるとき、かつて戦国の争乱を鎮め、260年の平和を築き上げた徳川幕府の揺るぎない統治意志が、現代のメガシティの中心に凛として息づいていることを実感させられる。