日本の映画業界において、裏社会とエンターテインメントの関わりを語る上で外せないのが任侠映画というジャンルだ。特に、女優の岩下志麻が主演を務めた看板シリーズ『極道の妻たち』は、極道社会に生きる女性たちの業と気品を見事に描き出し、日本中を席巻した。
岩下志麻が見せた圧倒的な演技力と威厳は、「極道の妻」「極道の娘」という存在に対する世間のイメージを決定づけた。作品のインパクトがあまりに強烈だったため、スクリーンの演技と実生活の境界線が観客の頭の中で曖昧になり、「実は本物の関係者ではないか」という都市伝説的な尾ひれがつく現象すら生んだ。フィクションが現実の噂を補強するという、昭和から平成初期にかけての独特なメディア空間の産物と言える。