北海道の鉄道が直面している存亡の危機は、単なる一時的な利用客減少ではありません。根本にあるのは、国鉄民営化時から内在していた構造的歪みと、激変した社会環境の複合的な打撃です。
JR北海道は1987年の国鉄分割民営化の際、本州3社(JR東日本・JR東海・JR西日本)とは異なり、発足当初から営業赤字が不可避と見込まれていました。そのため、国から交付された「経営安定基金」(約6,800億円)の運用益で本業の赤字を埋める事業モデルが設計されたのです。しかし、バブル崩壊後の超低金利政策の長期化によって想定していた利回りは激減し、財務基盤は根底から揺らぎました。
これに追い打ちをかけたのが、沿線地域の急激な過疎化とモータリゼーションの進展です。道内における自家用車保有率は極めて高く、都市間移動を除けば「日常の移動は車」というライフスタイルが完全に定着しました。さらに、北海道特有の過酷な気象条件が重くのしかかります。冬期の除雪費用や厳冬期の車両・線路メンテナンスには年間100億円規模の維持管理コストが投じられており、乗客が数人しか乗っていない列車を走らせるために莫大な固定費が費やされる悪循環に陥りました。
2016年11月、JR北海道は全路線の約半分にあたる10路線13線区(1,237.2km)を「当社単独では維持することが困難な線区」として公表。1日1kmあたりの平均通過人員(輸送密度)が200人未満の「赤線区」については、鉄道の維持を断念しバス転換などを自治体に提案する方針を打ち出しました。これが、近年の廃線ラッシュを決定づける引き金となったのです。