手書きの「月」が美しく見えない最大の要因は、縦横の比率が正方形に近づいてしまうことにあります。「月」という漢字の理想的なプロポーションは「縦2:横1」または「縦3:横2」の引き締まった縦長です。横幅を広げすぎると文字全体が膨張し、引き締まりのない印象を与えてしまいます。
現場のペン字指導において、文字のバランスを崩している典型的なミスとして以下の3点が挙げられます。
第1に、1画目の左払いを最初から斜めに寝かせてしまう失敗です。書き始めから左へ向かって払ってしまうと、文字の懐(ふところ)が潰れてしまいます。1画目は上部の約半分を「垂直にまっすぐ下ろす」意識を持ち、下部に入ってから緩やかに左下へ払うのが鉄則です。
第2に、2画目の「横折れハネ(折れ曲がりとハネ)」の高さの不一致です。2画目の縦線は、1画目の垂直部分よりもわずかに長く引き下ろし、文字の最下点から左上(次の画の始筆位置)へ向かって鋭くハネ上げます。このハネの底辺が1画目の払い終わりよりもほんの少し低い位置にあることで、文字に安定した重心が生まれます。
第3に、内部にある2本の横画の間隔の乱れです。3画目と4画目の短い横画は、上下の空間を3等分(均等)にするように配置します。このとき、3画目は左の縦線にしっかり付け、4画目は左右の縦線に接するように書くか、右側をわずかに空けると現代的な抜け感のある洗練された文字に仕上がります。