プッチ神父を象徴するセリフとして、真っ先に挙げられるのが「落ち着くんだ…『素数』を数えて落ち着くんだ…」というフレーズです。グリーン・ドルフィン・ストリート刑務所内で予期せぬ窮地に陥った際、自らの動揺を鎮めるために「2、3、5、7、11…」と素数を呟き続ける姿は、読者に強い衝撃を与えました。
作中でプッチは「素数は1と自分の数でしか割ることのできない孤独な数字……わたしに勇気を与えてくれる」と語っています。他者に頼ることなく自立した孤高の存在である素数に、自らの信仰と孤独な使命を重ね合わせている点が特徴的です。精神医学や心理療法の観点から見ても、パニック時に特定の数列に意識を集中させる行為は、情動の暴走を抑える「グラウンディング(認知の切り替え)」として理にかなった行動といえます。
このセリフの背景には、原作者・荒木飛呂彦氏の緻密な人物描写があります。プッチ神父は決して生来の冷徹な怪物ではなく、予期せぬトラブルに激しく動揺する繊細さと人間味を併せ持っています。だからこそ、神に仕える身でありながら数学的な法則という客観的秩序に縋る姿が、キャラクターとしての生々しさと不気味な説得力を生み出しているのです。