全国的なグルメ番組やSNSの投稿で頻繁に見かける「北海道の豪華な海鮮お雑煮」。角餅の上に大ぶりの新巻鮭の切り身が乗り、仕上げに艶やかな醤油漬けのいくらが散らされた一杯は、確かに北の豊かな海の幸を象徴する華やかさを持っています。しかし、これが「北海道全体の当たり前の日常」かというと、現場の実態は大きく異なります。
農林水産省の郷土料理調査や道内主要都市でのヒアリングデータを検証すると、日常的に鮭やいくらをお雑煮の具材として投入している世帯は、石狩川流域や釧路・根室などの一部沿岸地域に集中しています。道民の多くにとって、いくらは正月料理の「お重」や別添えの酒の肴として楽しむものであり、熱いお雑煮の汁に浮かべる家庭はむしろ少数派です。
道内スーパーの年末商戦データを見ても、雑煮用として最も売れる具材は「鶏もも肉」「大根」「人参」「ごぼう」であり、一般的な家庭では鶏肉の旨味を効かせた醤油味のすまし汁が日常の主役に君臨しています。海鮮雑煮は、特別なハレの日の演出や沿岸部漁師町の伝統、あるいは観光プロモーションによって定着した「華やかな一面」に過ぎません。