包丁を入れた瞬間に種とゼリー質がドロッと溢れ出してしまうのは、決して包丁の切れ味だけの問題ではありません。根本的な理由は、トマトの内部構造(子室と隔壁)を無視して切断していることにあります。
植物学的に見ると、トマトの内部は種子とゼリー状物質が詰まった「子室(Locule)」と、それを仕切る肉厚な組織である「隔壁(Septum)」に分かれています。果汁と旨味のアミノ酸が多く含まれるゼリー質は子室に集中しており、包丁の刃がこの子室の真ん中を横断してしまうと、風船が破裂するように水分がまな板の上へ逃げ出してしまいます。
これが「トマトの果汁が出ない切り方 理由」の核心です。つまり、ゼリー質が詰まった子室を避けて、肉厚な「隔壁」に沿って包丁を入れることさえできれば、種も果汁も果肉の中にしっかりと閉じ込めたまま美しく切り分けることが可能になります。
外見から内部の隔壁を見分ける鍵は、トマトのお尻(ヘタの反対側)にあります。中心から放射状に伸びるうっすらとした白い筋、通称「スターマーク」を確認してください。この白いスジの直下に隔壁が存在しています。筋に沿って包丁を入れれば隔壁を切ることになり、筋と筋の間のくぼみに包丁を入れれば子室を切ることになります。この解剖学的な事実を知っているかどうかが、仕上がりの明暗を分けます。