四国の東端、徳島県から兵庫県淡路島にかけての紀淡海峡エリアは、かつて明治から昭和にかけて都を守る防衛の要とされた由良要塞の一角をなしていた。無数の砲台跡や弾薬庫が建設され、要塞地帯として厳重な機密の幕に覆われていた地域だ。いま、そのコンクリートや赤レンガの構造物は、ガジュマルやアコウのような巨木の根に抱きつかれ、まるで太古の遺跡のような異様で静謐な美しさを纏っている。
しかし、その美しい景観の裏で進行しているのは壊滅的な風化だ。豪雨による斜面の崩落や構造物のクラックは年々深刻化しており、どこまで現物保存を維持できるかという現実的な壁が立ちはだかる。無造作に伸びる枝葉と崩れ落ちる壁面は、人類が築いた要塞すらも時間が飲み込んでいくという自然の冷酷さを無言のうちに告げている。