『赤と青のガウン』は、単なる皇族の回想録にとどまらない。そこには、一人の若き研究者が異国の地で孤軍奮闘する泥臭い日常が刻まれている。警察官に職務質問をされた驚きのエピソードや、寮での質素な暮らし、厳しい論文指導に苦悩する夜。ページをめくるごとに立ち現れるのは、皇族という重圧を背負いながらも、自己のアイデンティティを確立しようと模索する切実な素顔だ。
宮内庁の護衛がつく生活から一転、渡英後は自ら生活の差配を行い、時に理不尽な事態にも立ち向かわねばならなかった。そのドラマチックでありながらクスッと笑える日常の切り取り方は、従来の自伝文学の枠組みを遥かに超えている。読者はそこに、高貴な立場ゆえの孤独と、それを跳ね返すタフな精神力を読み取る。