物語の中盤から終盤にかけて、姉妹たちの抱える欺瞞が一気に破裂します。
父の愛人問題に憤慨していた滝子は、自らが雇った探偵・勝又と惹かれ合い、頭でっかちな潔癖主義を捨てて泥臭い愛へと踏み出します。一方、夫の浮気に疑心暗鬼となっていた巻子は、夫の不貞を確信しながらも家庭を壊さない道を選び、平然と笑顔を作り続けるという狂気じみた主婦の強さを見せつけます。
四女・咲子の同棲相手であるボクサーの試合と挫折、長女・綱子の不倫関係の行き詰まりなど、それぞれが己の業と対峙する中、最大の衝撃をもたらすのは母・ふじの存在です。
何も知らされていない純朴な被害者と思われていた母は、実は父の愛人宅を一人で訪れており、父の裏切りをすべて把握した上で沈黙を貫いていました。取り乱すこともなく、静かに愛人の家の前に立ち、何も言わずに去っていった母の姿こそが、作中で最も恐ろしい「阿修羅」であったという真実が突きつけられます。
母の急逝を経て、残された父と四姉妹はそれぞれの生活へと戻っていきます。誰一人として清廉潔白ではなく、嘘と秘密を抱えながらも、何事もなかったかのように日常を歩み直す四姉妹の後ろ姿とともに幕を閉じます。