群馬県中之条町に位置する野反湖が「天空の湖」と呼ばれる最大の理由は、標高1,513メートルという日本の湖沼でも屈指の高所にあり、周囲を標高2,000m前後の山々(弁天山、八間山、白砂山など)に囲まれたすり鉢状の地形にあります。もともとは自然の湿原や池沼が存在していた場所ですが、東京電力の水力発電用ダム(野反ダム)の建設に伴って現在の広大な人造湖が形成されました。
極めて特異な地理的特徴として挙げられるのが「分水嶺」の位置関係です。群馬県内にありながら、野反湖の水は太平洋側ではなく日本海側の信濃川(中津川)水系へと注ぎ出しています。太平洋側気候と日本海側気候が激しくぶつかり合う稜線上に位置するため、朝夕には幻想的な雲海が湖面を覆い、霧が晴れると眼前に抜けるような青空と深い碧をたたえた湖水が現れます。このダイナミックな景観変化こそが、写真家や旅人を惹きつけてやまない「天空」の由縁です。
人工的な街灯や商業施設が一切存在しないため、夜間は完全な漆黒に包まれます。澄み切った高冷地の空気を通して見上げる野反湖の星空は、天の川の微細な塵まで肉眼で捉えられるほどの圧倒的な情報量を誇り、国内最高峰の天体観測スポットとして知られています。