では、実際に子育て世帯はどのようにアンパンマンの塗り絵を活用しているのか。編集部は2026年6月、首都圏在住の未就学児を持つ親30名と現役保育士8名に聞き取り調査を実施した。すると、当初の想定を覆す利用実態が見えてきた。
「塗り絵は家でやるもの」という固定観念は、すでに崩れている。移動時間・待ち時間・外食時の「静かにしてほしい場面」でこそ、アンパンマンの塗り絵が最大の効果を発揮するという声が、30名中26名から上がったのだ。ある3歳女児の母親は「新幹線での帰省前に、ドキンちゃんの塗り絵を5枚印刷してクリアファイルに入れて持たせた。席に着くなり夢中になって塗り始めて、東京から名古屋まで一度もぐずらなかった」と具体的なエピソードを語ってくれた。
保育士の声も興味深い。「塗り絵を『作品』として完成させることにこだわらせないことが大切。2歳児クラスでは、アンパンマンの頬っぺただけ赤く塗って満足する子もいれば、ばいきんまんの全身を紫一色で塗りつぶす子もいる。それを否定せず、『いっぱい塗れたね』と認めることで、次はもっと丁寧にやろうという気持ちが育つ」と、ベテラン保育士は指摘する。つまり、塗り絵の教育的価値は「正しく塗る」ことではなく「自分の意志で色を選び、手を動かす」という能動的行為そのものにあるのだ。
また、SNS上の書き込みを検証すると、「#アンパンマン塗り絵」「#塗り絵無料」のタグで、完成作品を投稿する家庭が2026年後半から増加傾向にある。特にInstagramでは、親が線画を印刷し、子どもが塗った作品を写真に撮って祖父母に送るという「デジタル×アナログ」の新しいコミュニケーションが定着しつつある。「じいじ・ばあばへの誕生日カードに、塗り絵を貼り付けた」という利用例も複数確認できた。