「世界には自分と似た人が3人いる」という俗説は、多くの人が一度は耳にしたことがあるはずです。しかし、現代の顔認証AIや人類統計学のデータはこの俗説を真っ向から否定しています。
オーストラリアのアデレード大学で行われた人類学的研究によると、目、鼻、口の配置や骨格など、顔の主要な8つの身体的特徴が数学的に完全に一致する他人が存在する確率は「1兆分の1以下」であることが算出されています。地球の総人口が約80億人であることを踏まえると、遺伝子を共有しない赤の他人が完全なドッペルゲンガーとして存在する確率は統計学的にゼロに等しいと言えます。
それにもかかわらず「他人の空似」が頻繁に報告されるのは、人間の脳が持つ「相貌失認(顔識別機能)」の特性に起因します。脳の紡錘状回(ぼうすいじょうかい)は、目・鼻・口の配置バランスを大まかにパターン認識して個人を識別しています。髪型、輪郭、眼鏡などの表面的な特徴が数箇所一致しているだけで、脳が「瓜二つの同一人物」として過剰に誤認してしまうのです。つまり、世界に存在する「似た人」とは、物理的なクローンではなく、人間の知覚認知がもたらす類似性の錯覚に過ぎません。