土俵上で軍配を向けられた勝者力士が手にする「のし袋」の中身には、何が入っているのでしょうか。小切手や目録が入っていると想像されがちですが、中身は「ピン札の1万円札が3枚」です。
5本の懸賞がついた一番なら5個ののし袋、50本の懸賞がついた結びの一番なら50個ののし袋が重ねられて力士に渡されます。50本の一番を制した場合、土俵上で手渡される現金の合計は150万円です。両手からあふれんばかりの袋を抱える姿は視覚的にも圧倒的で、勝負の熱気と勝者の栄誉を観客へ直接伝えます。
勝ち名乗りを受けた際、力士は軍配の上の懸賞金を受け取る前に、右手で「左、右、中」と空を切る独特の所作を見せます。これは「手刀を切る(てがたなをきる)」と呼ばれる神聖な儀礼です。左が「神産巣日神(かみむすびのかみ)」、右が「高御産巣日神(たかみむすびのかみ)」、中央が「天御中主神(あめのみなかぬしのかみ)」という相撲の三柱の神へ感謝を捧げる作法であり、単に金銭を受け取る作業ではなく、勝利と恵みに対する感謝を示す伝統儀礼です。
懸賞金にまつわる記録として、歴代最多記録の頂点に君臨するのが第69代横綱・白鵬(現・宮城野親方)です。白鵬が全盛期に打ち立てた記録は突出しています。
- 1場所での最多懸賞獲得数:2,111本(2015年秋場所など、全盛期には1場所で1億円以上の懸賞金を獲得)
- 生涯獲得懸賞本数:通算1万本を大きく突破(懸賞金総額だけでも推定8億円超、手取りと積立で力士歴代トップ)
- 1番あたりの指定懸賞上限:日本相撲協会は取組進行の遅延を防ぐため、1つの取組にかけられる懸賞本数を最大約60本程度(原則上限50本+特別指定枠)に制限しています。
2015年秋場所千秋楽の鶴竜対照ノ富士戦や、歴代横綱同士の決戦では上限いっぱいの懸賞旗が土俵を何周も行進し、館内を興奮の渦に巻き込みました。