法廷という厳粛な空間に足を踏み入れるにあたり、最も質問が多いのが身だしなみと携帯品です。裁判所規則において「法廷の秩序を維持する」ための規定が設けられていますが、過剰に構える必要はありません。
まず服装についてですが、スーツを着用する必要はまったくありません。ジーンズにスニーカー、Tシャツといった清潔感のある普段着で問題なく入廷できます。ただし、法廷警察権を持つ裁判長の判断によって入廷を拒否されたり、退廷を命じられたりする服装が存在します。具体的には以下の点に注意を払う必要があります。
着用が制限される代表例は、特定の主義主張が大きくプリントされたTシャツや鉢巻き、ゼッケン、たすきです。裁判所は中立の場であるため、デモ活動やアピールとみなされる装飾は一切認められません。また、法廷内では脱帽が義務付けられており、サングラスや派手な仮装など、法廷の尊厳を損なうと判断される身なりも制止の対象となります。
持ち物に関しては、筆記用具とノートがあれば十分です。ここで特筆すべきはメモ筆記用具の持ち込みルールです。かつて法廷内でのメモ採取は厳しく制限されていましたが、1989年の最高裁判所大法廷判決(レペタ訴訟判決)により、「法廷内での自由なメモ採取は憲法第21条の精神に照らし尊重されるべき」と判断されました。現在では、紙のノートにペンで記録を取る行為は完全に自由化されています。
一方で、現代の電子機器に関しては厳格な制限が敷かれています。ノートパソコンやタブレット端末のキーボード打鍵音は法廷の静粛を乱すため、傍聴席での使用は原則として禁止されています。また、法廷内での写真撮影、動画撮影、録音は裁判所の許可がない限り法律で固く禁止されています。スマートフォンはマナーモードではなく、アラーム誤作動を防ぐために必ず電源を完全にオフにして鞄の奥にしまっておくのが現場の絶対ルールです。