現在でこそ白髪交じりの紳士的な風貌が定着していますが、村上弘明の若い頃のビジュアルインパクトは芸能界でも伝説として語り継がれています。法政大学在学中、友人が勝手に応募したオーディションを機に芸能界入りを果たした彼は、1979年の『仮面ライダー(新)』(通称スカイライダー)で主演デビューを飾りました。
当時の特撮ヒーロー界において、185cmという群を抜いたプロポーションと、どこか憂いを帯びた彫りの深い美形フェイスは極めて異例でした。子供たちだけでなく、その母親層からも凄まじい支持を集め、写真集やブロマイドが飛ぶように売れる社会現象を巻き起こします。
その人気を不動のものにしたのが、1985年にスタートした『必殺仕事人V』への抜擢でした。村上が演じた「花屋の政(のちに鍛冶屋の政)」は、手製の折鶴や手槍を武器に悪を成敗するクールな殺し屋。組紐屋の竜を演じた京本政樹とのコンビは「美形仕事人」として空前の大ブームを巻き起こし、必殺シリーズのファン層を一気に若い女性層へと拡大させました。劇中で見せるシャープな身のこなしと冷徹な眼光、そしてふとした瞬間にこぼれる情の厚さは、昭和から平成への移行期におけるテレビドラマ史の大きなハイライトです。
その後もNHK大河ドラマには欠かせない顔となり、『武田信玄』の高坂弾正、『秀吉』の明智光秀、『利家とまつ』の前田慶次郎、さらには『八重の桜』の松平容保など、歴史の転換点に立つ重要人物を威厳たっぷりに演じ切ってきました。