全国放送のレギュラー番組で見かける機会が激減したことから、検索窓には今なお「中上雅巳 引退」の文字が並ぶ。しかし、取材データおよび演劇界の動向を調査した結果、中上雅巳が芸能界を正式に引退した事実は一切存在しない。現在も舞台演劇の第一線に立ち、渋みを増した本格派の俳優として確固たる居場所を確立している。
テレビ露出が減少し始めた契機は、2000年代初頭における自身の表現活動の再定義にある。青年隊出身という華やかなタレントイメージが先行する中、中上本人は30代を迎えるにあたり「生身の人間を演じる演劇の現場で勝負したい」という強い意志を周囲に明かしていた。当時の演劇関係者の証言によると、彼はバラエティ番組のひな壇で消費されるポジションよりも、数カ月かけて1つの戯曲と向き合う劇団の現場に自ら足を運び、オーディションや客演の打診を地道に重ねていたという。
華やかなキー局のバラエティ界から舞台へと主戦場を移したタレントに対し、世間は短絡的に「消えた」「仕事がない」というレッテルを貼りやすい。しかし実態は真逆であり、表現者としての純度を高めるために、マスメディアの過剰な露出から自発的に距離を置いたというのが真相である。