1974年にリリースされ、日本のフォークソング史を代表するヒット作となった山本コウタローとウィークエンドの『岬めぐり』(作詞:山上路夫、作曲:山本厚太郎)。爽やかで軽快なメロディラインとは対照的に、歌詞には胸を締め付けるような切なさと、そこからの精神的な脱却が丁寧に描かれています。
作詞を手がけた山上路夫氏が描いたのは、かつて恋人が語っていた岬の風景を、別れた主人公が一人でバスに乗って訪ねるという情景です。「あなたがいつか話してくれた / 岬をめぐるバスに乗り」という導入から始まるこの物語は、単なる未練の吐露ではありません。見知らぬ乗客たちの笑い声や車窓をかすめる青い海に触れながら、主人公は「悲しみ深く胸に沈めて / 回り道でも旅を続ける」という静かな決意へと至ります。
この名曲の舞台として知られるのが神奈川県の三浦半島です。京浜急行電鉄・三崎口駅の発車メロディに採用されているほか、2004年には城ヶ島公園内に「岬めぐり歌碑」が建立され、多くのファンが訪れる聖地巡礼のシンボルとなっています。東京湾と相模湾を分かつこの半島は、都心からの近さと荒削りな大自然が共存しており、失意を癒やす小旅行の舞台としてリアリティを持っていたことが窺えます。