クロロという複雑怪奇な人物像を語るうえで、新旧キャスト陣の芝居の違いは最大の議論ポイントです。旧アニメ版でクロロを演じたのは永野善一氏(当時の表記:永野吉為)、そして2011年スタートのマッドハウス版(新アニメ版)で演じたのはトップ声優の宮野真守氏でした。両者のアプローチは方向性が明確に異なり、作品全体のトーンを左右する決定的な要素となっています。
永野善一氏の演技における最大の特徴は、感情の起伏をあえて殺したアンニュイなトーンにあります。怒りや高揚感を表に出さず、マフィアを壊滅に追い込む冷酷な命令すら、まるで明日の天気を口にするかのような淡々とした低音で放たれました。この「感情の読めなさ」こそが、底の知れない底なしの虚無感を醸成し、視聴者にゾッとするような艶めかしさを感じさせたのです。
一方、宮野真守氏が構築した新アニメ版のクロロは、知性と若きリーダーとしての求心力が際立つ劇場型カリスマです。滑舌の良いクリアな発声、知略を巡らせる頭脳派としての明瞭な説得力、そして団員たちを牽引する王者の風格が前面に押し出されていました。少年ジャンプのアニメーションとしての見やすさ、王道のダークヒーロー/ヴィラン像を体現した完成度の高い芝居といえます。