ネット上の移籍議論において、極めて頻繁に見られる誤解が「巨人は伝統的にポスティングによる移籍を絶対に認めない」という言説です。確かにかつては渡邉恒雄元オーナーをはじめとする球団上層部がポスティングに対して頑なな姿勢を取っており、松井秀喜も海外FA権を取得するまで海を渡ることは叶いませんでした。しかし、この見方は現在の球団経営の実態と乖離しています。
2019年オフに山口俊が球団史上初となるポスティングによるメジャー移籍を果たし、菅野智之の際にも制度利用を容認した経緯があります。現代の読売ジャイアンツは「選手の権利や市場価値をいたずらに束縛する閉鎖的な球団」というイメージが、若手有望株の獲得やドラフト戦略において致命的なマイナスに働くことを深く理解しています。
さらに見逃せない盲点が、海外FA移籍とポスティング移籍における「球団の金銭的リターン」の違いです。海外FA権による移籍の場合、巨人に支払われる補償金(譲渡金)はゼロです。しかしポスティングシステムを利用した場合、契約規模に応じて数億円から数十億円規模の譲渡金が古巣である巨人に支払われます。球団経営の観点からすれば、海外FAで無償で去られるくらいであれば、ポスティングを容認して得た巨額の譲渡金を原資に新たな外国人選手や育成環境への投資へ充てる方が、はるかに合理的であるという計算が成り立つのです。