金魚が水面で口をパクパクさせる行為は、専門用語で「鼻上げ(はなあげ)」と称されます。水面は空気と直接触れ合っているため、水槽内で最も溶存酸素濃度が高い極薄の境界層が存在します。金魚は水中の酸素を吸えなくなった際、本能的にこの水面ギリギリの酸素を取り込もうとして口を突き出すのです。
観賞魚医療の現場データによると、健康な金魚のエラ蓋の開閉および口の動きは1分間に約60〜90回が適正リズムとされています。これが1分間に120回以上に達している場合、明らかに異常な呼吸促迫状態に陥っています。愛魚が発している危機レベルを判断するため、まずは原因の切り分けが不可欠です。
金魚が鼻上げを起こす根本原因は、大きく分けて以下の4点に集約されます。
第1に「物理的な酸欠」です。特に夏場の高水温期やエアレーション不足の環境下では、水中に溶け込める飽和溶存酸素量が著しく低下します。水温が30℃近くまで上昇すると、水中の酸素量は冬場に比べて約20〜30%も減少するため、金魚は激しい呼吸困難に直面します。
第2に「水質悪化によるアンモニア中毒」です。ろ過バクテリアの処理能力を超える過密飼育や餌の与えすぎ、フィルターの目詰まりによって有害なアンモニアや亜硝酸濃度が急上昇すると、金魚の血液中で酸素を運ぶヘモグロビンの機能が阻害されます。結果として、水中に酸素があっても細胞レベルで窒息死に至る「内的酸欠」を引き起こします。
第3に「エラ病の初期症状」です。ダクチロギルスやギロダクチルスといった寄生虫、あるいはカラムナリス菌などの細菌がエラに感染すると、エラ組織が充血・癒着・欠損し、ガス交換そのものが不可能になります。水面でパクパクするだけでなく、エラ蓋が片方しか動かない、あるいはエラ蓋が開きっぱなしになっている場合は、感染症の進行を疑わねばなりません。
第4に「浮いてパクパクする転覆病の初期段階」です。消化不良や浮袋の機能障害により体が浮いてしまい、沈めなくなったストレスから水面で口を動かし続けるケースもあります。