ネット上の掲示板や知恵袋、SNSの医療相談コミュニティを調査すると、「自分では鼻が通っているつもりなのに、職場や学校で風邪を疑われ続ける」という深い悩みが数多く可視化されています。
ある30代の会社員男性は、自著のような詳細な手記で次のように当時の実態を告白しています。
「毎朝の点鼻薬も不要なほど鼻呼吸はスムーズ。それなのに、プレゼンや商談のたびに『体調悪いの?』『声がこもっていて聞き取りづらい』と言われ続け、精神的に追い詰められました。自分では普通の声を出しているつもりなのに、スマホで録音した自分の声を聞いた瞬間、あまりの鼻声ぶりに愕然としたのを覚えています」
この男性が耳鼻咽喉科を受診したところ、ファイバースコープとCT検査によって、前頭洞と上顎洞の奥深くにびっしりと粘液が溜まった潜在性の慢性副鼻腔炎が発覚しました。鼻前庭(鼻の入り口)の通気路は開いていたため鼻詰まりを自覚していなかったものの、声帯で作られた音が副鼻腔で共鳴せず、すべて吸収されてしまっていたのです。
また、20代女性のケースでは、リモートワークへの移行後に「マイクを通すと異様な鼻声になる」と同僚に指摘されたことを契機に受診した結果、軽度の軟口蓋低形成と機能不全が判明しました。日常生活では会話速度が遅いため目立たなかったものが、ヘッドセットを通したクリアな音声環境によって息漏れ成分が強調され、発覚に至ったという現代特有の背景も見受けられます。
診察室において医師が共通して証言するのは、「本人の自覚する通気性と、実際の病変の有無は必ずしも一致しない」という厳然たる事実です。嗅覚の鈍さ、後鼻漏(鼻水が喉に流れる感覚)、あるいは起床時の喉の乾燥といった些細な随伴症状が、正確な鑑別の決定打となるケースが少なくありません。