物語が終盤に向かうにつれ、住人たちに突きつけられるのが「仮設住宅の撤去・立ち退き期限」という抗えない現実です。第9話から最終回(第10話)にかけて描かれたのは、いつまでも続くと思われていた「かりそめの楽園」の終焉でした。
半助は当初、街の住人たちを観察して「この街を立ち退かせるための口実」を集める報告書を報酬目当てに提出していました。しかし、タツヤやオカベ、六ちゃんたちと酒を酌み交わし、彼らの抱える生々しい傷や家族の呪縛、情けない本音に触れるうちに、半助自身がこの街なしでは生きられない人間へと変わっていました。
最終回、ついに重機が入り、プレハブ住宅が次々と解体されて更地へと戻されていきます。住人たちはそれぞれ、復興公営住宅へ移る者、故郷へ帰る者、あるいは再びどこかへ流れ着く者など、バラバラの道を歩み始めます。タツヤも家族を連れて街を離れ、オカベも新たな一歩を踏み出します。
そして、電車を運転し続けていた六ちゃんは、線路も街も消え去った更地の上を、変わらぬ足取りで「どですかでん、どですかでん」と走り抜けます。半助は報告書の提出を拒絶し、街の住人たちへの愛着を胸に抱いたまま、愛猫とともに更地となった土地に立ち尽くします。
この結末が感動的なのは、「街の消滅=バッドエンド」として描いていない点にあります。仮設という仮初めの器は壊れても、そこで誰かと笑い、怒り、泣いたという記憶そのものは決して消えない。人は傷つきながらも、思い出を背負って次の場所へ歩き出せるという、力強い生の肯定が提示されたのです。