水素水メーカーが好んで使う理論がある。「体内の悪玉活性酸素を水素が除去する」というストーリーだ。確かに、試験管の中(in vitro)での実験では、水素分子が活性酸素と反応して水に変わる現象が確認されている。しかし、これが人間の体内(in vivo)で同じように起こるかといえば、話は別だ。
臨床試験の多くは規模が小さく、被験者の偏りも大きい。信頼性の高いダブルブラインド(二重盲検)テストで、明確な健康増進効果を示したデータは依然として不足している。医学界からは「経口摂取したわずかな水素が、胃酸や消化酵素をかいくぐり、細胞レベルで劇的な変化をもたらすとは考えにくい」との冷ややかな声が上がる。ブーム先行で科学が置き去りにされた典型例と言わざるを得ない。