ネット上の一部コミュニティでは、「柔軟剤には殺菌成分が入っているものもあるから、洗剤なしでも菌は死滅する」「香りが強いから汚れの臭いも消せる」といった短絡的な言説が見受けられます。しかし、これは危険な認知の歪みです。
第一の誤解は、「香料によるマスキング効果」と「物理的な消臭・除菌」の混同です。柔軟剤の強い香りは、臭いの分子を香料の粒子で一時的に包み隠しているだけに過ぎません。悪臭の元凶であるイソ吉草酸などの低級脂肪酸は分解されずに繊維に残存しています。体温で衣類が温められたり、雨の湿気を吸ったりした瞬間に香料の膜が破れ、隠されていた腐敗臭が一気に放出されます。これが、いわゆる「香害」や強烈な生乾き臭へと変貌するメカニズムです。
第二の誤解は、市販の柔軟剤に含まれる「抗菌成分」に対する過信です。柔軟剤に配合される抗菌剤は、あくまで「洗濯後に新たな菌が付着・増殖するのを一時的に抑制する」目的で設計されています。既に衣類に染み付いた大量の雑菌を殺菌・除去するパワーは備わっていません。汚れを取り除く工程を省いた抗菌加工は、泥水の上にワックスを塗るようなものであり、衛生面における意味を持ちません。