女性性という概念を理解する上で最も重要な出発点は、「肉体的な性別とは完全に切り離された心理的機能である」という事実です。男性の中にも豊かな女性性が存在し、女性の中にも強靭な男性性が存在します。両者は対立するものではなく、ひとつの人格の中で互いを補完し合う双璧のシステムとして働いています。
概念的な対比としてよく用いられるのが「Being(存在・感じること)」と「Doing(行動・達成すること)」の軸です。女性性が「いま、ここにある感覚を味わい、受け入れる受容力」を司るのに対し、男性性は「目的地を設定し、論理的な行動によって課題を解決する推進力」を担います。スイスの精神科医であるカール・グスタフ・ユングが体系化した分析心理学では、男性の無意識下に存在する女性的側面を「アニマ」、女性の無意識下に存在する男性的側面を「アニムス」と定義しました。ユング心理学において、自己実現(個性化)の究極のプロセスは、この抑圧された異性的な心の側面を自覚し、調和させていく作業にあります。
女性性と男性性の違いは、優劣ではなく役割の違いです。直感で「これが好きだ」「ここに行きたい」と感じるのが女性性のセンサーであり、それを実現するためにスケジュールを組み、資金を工面して実行に移すのが男性性の推進力にあたります。女性性が十分に機能していない状態では、いくら行動を起こしても「なぜそれをしているのか分からない」という虚無感に襲われます。