10アールという広さを語る上で、避けて通れないのが法規制の大きな転換点です。農地を取得(購入または賃借)する際、長らく新規参入者の前に立ちはだかっていたのが「下限面積要件」でした。
かつての農地法第3条では、農地を取得するための要件として「取得後の経営面積が原則50アール(北海道は2ヘクタール)以上」であることが義務付けられていました。小規模な取得による農地の細分化を防ぎ、経営を安定させる目的でしたが、これが就農希望者にとって高すぎる参入障壁となっていたのです。
こうした中、深刻化する高齢化や耕作放棄地の急増を食い止めるため、法改正が断行されました。農地法下限面積撤廃の経緯として、2026年の法改正を経て2026年4月1日より下限面積要件が全国一律で完全に廃止されたのです。
この改正により、制度上は「10アール」はもちろん、わずか「1アール(100平米)」の農地であっても取得できるようになりました。しかし、ここでネット上を中心に「誰でも自由に農地を買えるようになった」という致命的な誤解が生じています。
撤廃されたのはあくまで「面積の下限」だけであり、農地取得要件の現在(2026年時点)においても、農地法第3条に基づく以下の基本要件は厳格に維持されています。
- 全部効率利用要件:取得する農地のすべてを効率的に利用して耕作を行うと認められること(草刈りや耕運機械の確保状況など)。
- 常時従事要件:取得者本人が必要な農作業に年間原則150日以上従事すること。
- 地域との調和要件:地域の水利組合の共同作業(水路清掃や草刈り)に参加し、農薬散布や作付けにおいて周辺農家に迷惑をかけないこと。
- 地域計画(目標地図)への適合:市町村が策定する将来の農地利用計画と齟齬がないこと。
現場の農業委員会事務局からは、「家庭菜園のつもりで申請に来る方が増えたが、営農計画があまりに杜撰であったり、周辺との協調姿勢が見られなかったりして不許可になる事例が後を絶たない」というリアルな声が上がっています。面積の足かせが外れた今だからこそ、就農に対する本気度が厳しく審査されている点に留意しなければなりません。