北海道の食通たちが「旅の最適期は初冬」と口を揃えるのには明確な生物学的・漁業的根拠があります。海水温が急激に低下する11月、北の海に生息する魚介類は厳しい冬を越すために身を締め、極上の脂を蓄え始めます。
代表格が、秋サケの卵巣をほぐして醤油漬けにした生イクラです。11月上旬までは皮が柔らかく濃厚な新物が楽しめます。さらに鵡川町をはじめとする太平洋沿岸では、10月から11月下旬のわずかな期間にのみ漁が解禁される「本ししゃも」が生の状態で流通します。一般に全国の居酒屋で流通している輸入カペリン(カラフトシシャモ)とは肉質も風味も別次元であり、現地でしか食べられない「ししゃもの握り寿司」や香ばしい焼き物は、この季節の北海道を訪れる決定的な動機となります。
このほか、厚岸やサロマ湖で水揚げが本格化するクリーミーな真牡蠣、身の詰まりが頂点に達する毛ガニ、そして新そばの収穫期とも重なります。ハイシーズンのような名店前の長蛇の列を避け、ゆったりとカウンターで地酒とともに旬の味覚を堪能できる点も、オフシーズン旅行の醍醐味です。