本作の極めて革新的なポイントは、異なるレコード会社から2つのバージョンが同日発売された点にあります。レーベルの垣根を越えたこの試みは、音楽ビジネスの観点からも前代未聞の仕掛けでした。
東芝EMIからリリースされたスチャダラパー名義の「smooth rap」バージョンは、ヒップホップの質感を前面に押し出したタイトなビートとラップが主役。一方、メディア・レモラスからリリースされた小沢健二名義の「nice vocal」バージョンは、ソウルフルな歌声とポップなアレンジが際立つ構成になっています。歌詞の骨組みやトラックは共有しつつ、ミックスやボーカルのバランスを変えることで、双方の持ち味を最大限に引き出しました。
楽曲のトラック制作における元ネタ(サンプリング&オマージュ元)としても知られているのが、アメリカの女性R&Bグループ・アン・ヴォーグ(En Vogue)が1992年に発表した『Give It Up, Turn It Loose』です。特徴的なベースラインやファンキーなリズムアプローチを巧みに引用し、90年代初頭のネイティブ・タン派(A Tribe Called QuestやDe La Soulなど)に通じる洗練されたグルーヴへと再構築されました。