現地を訪れるファンが真っ先に息を呑むスポットが、伊香保温泉の最奥部、湯元付近に架かる伊香保温泉河鹿橋です。緩やかな弧を描く朱塗りの太鼓橋は、周囲を鬱蒼としたモミジやカエデの原生林に囲まれ、千尋がハクに連れられて息を止めながら渡った「あの橋」のビジュアルを鮮明に呼び起こします。
秋の紅葉期だけでなく、新緑の季節や夜間のライトアップ時における佇まいは、まさに現世から神々の湯屋へと続く境界線の趣を醸し出しています。橋のたもとに佇むと、どこからか湯婆婆の手下たちが現れそうな妖艶な気配すら漂います。
さらに、温泉街の中心を貫く伊香保温泉石段街も見逃せません。365段の石段の両脇には射的場やお土産屋、湯の花まんじゅうを蒸す湯気が立ち並び、石段の下には黄金の湯が滔々と流れる「小間口(こまぐち)」と呼ばれる分湯構造が巡らされています。昼夜で劇的に表情を変えるこの立体的な温泉街のランドスケープこそ、千尋が迷い込んだ八百万の神々が集う繁華街そのものの空気感を今に伝えています。