現在でもネット上の言説において、「最高裁判所が植村隆の記事を捏造と認定した」という言説が事実であるかのように語られるケースが後を絶ちません。しかし、法学的な判例解釈において、この言説には明確な誤解が含まれています。
日本の民事裁判における名誉毀損訴訟では、原告の名誉が毀損された場合でも、以下の条件が揃えば違法性が阻却(不法行為が不成立)されます。
- 公共の利害に関する事実に係ること(公共性)
- もっぱら公益を図る目的に出たこと(公益性)
- 摘示された事実が真実であると証明されたこと(真実性)、または真実と信じるについて相当の理由があること(真実相当性)
一連の裁判で司法が下した判決の核心は、「植村氏の記事には事実と異なる点や重要な事実の記載漏れがあったため、西岡氏や櫻井氏が『捏造』と評価・論評したことには合理的な根拠(真実相当性)があり、名誉毀損の責任は問えない」という点にあります。
裁判所は「植村氏が虚偽であることを知りながら故意に嘘の記事を書いた」と認定したわけではありません。しかし同時に、記者の側に重大な事実誤認や不都合な事実の取捨選択があった以上、外部の批評家から「捏造」と批判されても甘受せざるを得ない、という極めて厳しいジャーナリズムの責任論を突きつけたのが確定判決の冷徹な事実です。