苔盆栽を仕立てる上で、どの種類の苔を選ぶかは作品の表情を決定づける重要な要素だ。堂々とした直立姿で針葉樹林のような荘厳さを醸し出す「スギゴケ」は、凛とした気品を持ち合わせている。一方、這うように緻密なマットを形成する「ハイゴケ」は、乾燥や環境変化に比較的強く、初心者にも扱いやすい柔軟さが魅力だ。
これらを溶岩石やミニチュアの古木と組み合わせることで、日本固有の美意識である「侘び寂び」が立ち現れる。完全な左右対称を避け、あえて余白を残すこと。時の経過とともに少しずつ苔が岩肌を覆っていく不完全の美を楽しむこと。手のひらに収まるわずか十数センチの空間に、悠久の自然景観を投影する贅沢がここにある。