貫多の精神的支柱であり、その後の人生を決定づけたのが、大正時代の没落文豪・藤澤清造(ふじさわ せいぞう)への傾倒です。石川県七尾市出身で狂死・凍死を遂げた清造の文学と境遇に魂を救われた貫多は、清造の「没後弟子」を自任し、全集刊行や墓守に執念を燃やします。
貫多の生涯を時系列順に追いたい読者のために、北町貫多シリーズのおすすめの読む順番を整理しました。
- 青年・極貧期:『けがれなき酒のへど』『どうで死ぬ身の一踊り』
- 日雇い労働期:『苦役列車』
- 秋恵との同棲・葛藤期:『小銭をかぞえる』『歪んだ朝』『乞食名車通い』
- 文壇進出・作家期:『暗渠の宿』『芝公園六角堂跡』
- 晩年・到達点:『雨滴ら落つ』(遺作)
2026年の急逝により北町貫多の最後の作品となった遺作『雨滴ら落つ』では、作家として地位を確立しながらも、老いと孤独、そして拭えない生活の苦衷に喘ぐ貫多の最終章が描かれました。未完でありながら、孤高の私小説書きが命を削って遺した記念碑的傑作です。