認知心理学の研究は、人間が驚くほど容易に「偽の記憶」を受け入れることを証明してきた。子供の頃の遊園地での出来事や、会ったこともない親戚との会話など、誘導質問や合成画像を見せられるだけで、人は自発的に「あの日、確かに自分はそこにいた」という詳細なエピソードを作り上げてしまう。
つまり、記憶とは過去の正確な再生装置ではなく、現在与えられた文脈に合わせてリアルタイムで紡がれるストーリーに過ぎない。もし脳が毎秒ごとに「辻褄の合う過去」を再構成しているのだとすれば、私たちは5分前どころか、数秒前の自分とすら連続していない可能性があるのだ。