従来の環境調査では、アンモニアや硫化水素といった特定の化学物質が気体中にどれだけ含まれているかを示す「ppm(パーツ・パー・ミリオン)」という物質濃度の単位が主流だった。しかし、ここには大きな落とし穴が存在した。特定の成分が極めて低いppm値であっても、複数の物質が混ざり合うことで、人間には激しい悪臭として感知される事態が多発したのだ。
そこで環境省が主導し、行政の規制現場に導入されたのが「悪臭防止法」における臭気指数規制である。化学分析機器の数値だけに頼るのではなく、人間の鼻を用いた「三点比較式臭袋法」という官能試験によって「臭気濃度」を割り出す画期的なアプローチだ。
事業所から排出される煙や排水がどれだけ周囲に影響を与えているかを測る際、単一物質のppmではなく、総合的な人間の感覚に基づいた臭気指数が法定基準となる。これにより、近隣住民との間で紛争が絶えなかった工場地帯やサービス業の現場において、公平で納得感のある法的判断を下すことが可能になった。