医療機関での治療が一段落した後、待っていたのは果てしないリハビリの日々だった。寝たきりの状態から少しでも身体機能を回復させるため、矢野氏は専門家と協力し、独自のプログラムを模索した。指先を動かす、音に反応する。健常者にとっては当たり前の動作一つひとつが、彼らにとってはエベレスト登頂並みの難事業だった。
「奇跡は待つものではなく、自ら手繰り寄せるものだ」。彼の行動はそう物語っていた。理学療法士も驚くほどの熱意で、毎日のマッサージや語りかけを継続した。その結果、佳那の身体には徐々に変化が現れ始める。微かに表情が和らぎ、視線が夫を追うようになったのだ。科学的な予測を覆す瞬間だった。