スタート直後、周囲の熱気に呑まれてペースを上げてしまう——これが持久走で自滅する最も典型的なパターンだ。運動開始直後の数分間は、体内の酸素供給系がフル稼働するまでの過渡期にあたる。ここで無酸素運動に近い心拍数まで急上昇すると、血中に乳酸が急増し、後半まで尾を引く重度の酸素負債を抱え込むことになる。
現代スポーツ科学のトレンドは、最大心拍数の60〜70%程度に抑える「Zone 2(有酸素ゾーン)」の徹底維持だ。最初の数分間は「少し物足りない」「歩くよりやや速い」と感じる程度のペースで意図的に抑え込む。この序盤のコントロールこそが、後半における驚異的な粘りを生み出す最大のエネルギー貯金となる。