日本の医療政策において「5疾病6事業」とは、医療法第30条の4に基づき、各都道府県が策定する「医療計画」の中で医療連携体制の構築が義務付けられている重点疾患および重点事業を指します。都道府県は5年ごと(医療計画自体は6年ごと)にこれら各項目の現状を分析し、数値目標や医療機関相互の機能分担を定めています。
この枠組みは最初から現在の形だったわけではありません。2006年の医療法改正によって「4疾病4事業(がん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病/救急、災害、へき地、周産期医療)」として制度化された後、小児医療が事業へ組み込まれて「4疾病5事業」となりました。そして2013年度施行の第6次医療計画において、精神疾患が5つ目の疾病として、在宅医療が6つ目の事業として追加され、現在の強固な基盤が完成しました。
厚生労働省の検討会資料や関係審議会の議事録を精査すると、両者が追加された背景には、座視できない社会構造の変化が存在していました。当時、精神疾患を有する患者数は急速に拡大し、厚生労働省「患者調査」においてがんや糖尿病を抜いて国内第1位(約320万人、現在は600万人規模へ到達)を記録しました。うつ病など気分障害の急増に加え、高齢化に伴う認知症患者の爆発的増加、さらには長年批判されてきた「精神病床への社会的入院」を是正し、地域社会で支えるノーマライゼーションへの転換が急務となった事実が決定打です。
一方、在宅医療の追加理由は、超高齢社会の進展に伴う「病床不足」と「多死社会」への危機感に他なりません。急性期病床だけで膨大な高齢者医療を支え続けることは財政的にも物理的にも不可能です。住み慣れた自宅や介護施設で療養生活を継続し、最期を迎えることができる「地域包括ケアシステム」を完成させるため、在宅医療を単なる選択肢ではなく、都道府県が計画的に確保すべき基盤事業へと格上げすることが不可欠でした。