母針の育児放棄や母乳の出が悪い場合、飼育者による人工授乳が唯一の命綱となる。ここで絶対に使ってはならないのが市販の牛乳だ。乳糖を分解できないハリネズミに下痢を引き起こさせ、脱水で急死させる原因となる。代用乳には小動物用ミルク、あるいは成分調整されたヤギミルクを人肌(約37〜38度)に温めて使用する。
授乳にはシリンジや極細のスポイトを用い、誤嚥を防ぐため一滴ずつ口角へ運ぶ。肺にミルクが入れば誤嚥性肺炎を起こし、回復は極めて困難だ。生後1週目までは2〜3時間おき、昼夜を問わない授乳スケジュールが求められる。また、幼体は自力で排泄できないため、授乳前後にぬるま湯で湿らせた綿棒で総排泄腔を優しく刺激し、排便と排尿を促す作業が欠かせない。
飼育ケージの設計にも細心の配慮がいる。視覚が未発達な幼体は、わずかな段差から落下しただけでも骨折や内臓損傷を負う。金網タイプのケージは手足を挟む事故が多発するため、滑らかなアクリルケースや衣装ケースを改造したフラットな環境が理想的だ。床材には針葉樹のチップを避け、アレルギー反応の出にくいペーパーマットや清潔な布タオルを選択するのが鉄則である。