日本の電子部品業界において、2017年の事業譲渡は大きな転換点だった。ソニーが長年培ったリチウムイオン電池のパイオニア技術と、村田製作所が誇る積層セラミックコンデンサ(MLCC)の超精密材料プロセス。この二つが融合した場所こそが、多賀城の工場である。
初期の統合プロセスは決して平坦ではなかった。異なる組織文化、設備仕様の統合、歩留まり向上の壁。しかし、技術者たちの執念が結実した。微細な電極材料を均一に塗り重ねるコーティング技術と、0.001ミリ単位の誤差も許さない巻き取り・積層技術の融合により、エネルギー密度と安全性を極限まで高めたセルが誕生したのだ。
競合する海外メーカーが低価格を武器に市場へ押し寄せる中、多賀城から出荷される電池は「壊れない、膨らまない、劣化しない」という絶対的な信頼性で差別化を図っている。特に安全基準が極めて厳しい医療用途や、常時稼働が求められる産業用IoT機器において、多賀城ブランドは代替不可能な存在となった。