油小路の変を語る上で欠かせないのが、新選組三番隊組長・斎藤一の暗躍と、遺体を巡る壮絶な白兵戦です。
斎藤一は御陵衛士の結成時に伊東に従って新選組を脱退していましたが、これは近藤・土方の命による潜入工作(スパイ)だったとされています。斎藤が「伊東が近藤暗殺を謀っている」という情報を新選組本部にリークしたことで、暗殺計画が実行に移されたのです。斎藤自身は襲撃の直前に姿を消し、新選組へと帰還しました。
伊東を仕留めた新選組は、その遺体を油小路の路上に意図的に放置しました。遺体を引き取りに来る御陵衛士の残党を一網打尽にするための「囮(おとり)」としたのです。
罠と知りながらも同志の遺骸を放置できず、現場に駆けつけたのは鈴木三樹三郎、服部武雄、藤堂平助、毛内有之助ら7名の御陵衛士でした。周囲を取り囲む40名以上の新選組隊士との間で、凄惨な死闘が幕を開けます。
中でも二刀流の使い手・服部武雄の奮戦は凄まじく、民家の壁を背に両手の刀を振るい、新選組の包囲を寄せ付けず多数の隊士を死傷させました。しかし衆寡敵せず、刀折れ矢尽きて討死。試衛館以来の同志であった藤堂平助も、近藤から「生かして逃がせ」との内命があったものの、事情を知らない隊士によって斬殺されました。
生き残った鈴木三樹三郎や篠原泰之進らは包囲を突破し、薩摩藩邸へと逃げ延びることに成功。この生き残りたちが、後に鳥羽・伏見の戦いの前夜に近藤勇を狙撃して重傷を負わせるなど、新選組への徹底した復讐戦を展開していくことになります。