人事・組織心理学の領域では、従業員が組織の規定や暗黙のルールをどれほど尊重できるかを示す指標として「組織市民行動(Organizational Citizenship Behavior)」という概念が重視されます。採用担当者は、履歴書の細部を通じてこの組織市民行動の適性を観察しています。
本人希望記入欄で「貴社の規定に従います」と素直に書ける人材は、組織の秩序を受け入れ、チーム全体の調和を乱さない心理的安全性を持った人物と評価されます。一方で、自己流のこだわりや一方的な条件を詰め込む人物は、入社後も労務管理上の摩擦を引き起こしやすい「境界線トラブルの予備軍」として警戒されます。
ここから導き出される、本人希望欄に条件を「書くべき人」と「書くべきではない人」の厳格な境界線は以下の通りです。
【本人希望欄に条件を書くべき人(例外枠)】
・育児や要介護家族の介助など、法律上・生活上、勤務時間や場所に物理的制約がどうしても発生する人
・複数の募集職種が存在する求人で、特定の専門職種への配属を前提としてエントリーしている人
・日中の電話対応が一切できず、事前の時間指定がないと連絡の行き違いで面接設定が破綻する在職中の人
【本人希望欄に条件を書いてはいけない人(原則枠)】
・「できれば残業はしたくない」「家から近いオフィスがいい」といった希望・嗜好レベルの条件しかない人
・給与水準や昇給について自分の希望額を少しでも高く主張したいと考えている人
・「特になし」と手短に済ませて提出しようとしている人
就職活動における真の交渉力とは、書類に要求を書き連ねることではなく、面接で圧倒的な魅力と価値を示した後に、「あなたに来てほしいから、その条件を呑もう」と企業側に言わせることです。本人希望欄はその交渉の場ではなく、信頼関係を結ぶための入り口に過ぎません。