篠原涼子が「元アイドル」「ヒット歌手」という肩書を完全に過去のものとし、日本を代表する大女優へと登り詰めた決定的契機が、2000年代中盤に主演した2つの伝説的ドラマ、『アンフェア』(2006年、関西テレビ・フジテレビ系)と『ハケンの品格』(2007年、日本テレビ系)でした。
『アンフェア』で演じた刑事・雪平夏見は、「無駄に美人」と称されながらもバツイチ、大酒飲み、型破りな捜査で犯人を追い詰める孤高のダークヒロイン。従来のテレビドラマにおける「男性に従属する女性刑事」のステレオタイプを粉砕し、コートのポケットに手を突っ込んで荒野を歩くようなクールな姿は、社会現象となりました。
続く『ハケンの品格』では、時給3000円の特Aランク派遣社員・大前春子を怪演。「残業は一切いたしません」「それが何か?」と無表情で言い放ち、数々の難関資格を駆使して正社員のトラブルを鮮やかに解決していく姿は、長引く不況と雇用不安に直面していた日本社会の視聴者に痛快なカタルシスを提供しました。最終回視聴率は26.0%を記録し、名実ともに国民的女優の座を不動のものにします。
撮影現場のスタッフや関係者が一様に証言するのは、彼女の桁外れのプロフェッショナリズムです。大前春子の役作りでは、劇中で登場する重機の操縦や助産師、マグロの解体といった特殊な所作を完璧に身につけるため、寝る間を惜しんで練習を重ねました。膨大なセリフも現場に台本を一切持ち込まずに完璧に頭に入れていたことは業界内でも有名です。
視聴者コミュニティやSNSでも、「雪平夏見の潔さと影のある瞳に憧れた」「大前春子のブレない姿勢を見て派遣社員としての誇りを持てた」といった声が今なお語り継がれています。彼女が獲得した人気は、単なる外見の美しさにとどまらず、過酷なエンタメ界を自らの足でサバイブしてきた芯の強さが役に乗り移っていたからこそ生まれたものでした。