鶴田浩二の役者人生を語るうえで避けて通れないのが、東宝で二枚目スターとしての揺るぎない地位を築いた後、東映へと移籍し新境地を開拓した波乱の歴史だ。この二大映画会社の看板を背負うという壮絶なプレッシャーの渦中にあって、彼の傍らには常に妻・中川ヒロ子の存在があった。
元女優としてのキャリアを持つ中川ヒロ子は、華やかな芸能界の裏に潜む苛烈な競争や人間関係の機微を誰よりも熟知していた。夜遅くまで映画関係者やプロデューサーが自宅に押しかける日々に置かれても、彼女は細やかな気配りと手料理で場を和ませ、夫が次の撮影に向けて全力を注げる環境を完璧に整え続けた。夫が映画界の第一線で輝き続けられた背景には、間違いなく彼女の知性と深い理解があった。