こうした古典的セリフや威厳ある人物像のセルフパロディ化を語るうえで、日本の漫画史が誇る名作の存在を外すことはできない。原作者・雁屋哲の手によって生み出された『美味しんぼ』は、単なるグルメ漫画の枠を超え、人物描写の深みで時代を象徴する作品となった。劇中に登場する究極の偏屈でありながら圧倒的な品格を放つ海原雄山のような強烈なキャラクター像は、のちの創作物やパロディ文化に決定的な影響を与えている。
厳格な権威と、ふとした瞬間に覗く人間味。そのギャップが生み出すおかしさは、まさに「こやつめ」と呟きたくなるような滑稽さと紙一重だ。『美味しんぼ』が示した緻密な人間ドラマと強烈な台詞回しは、昭和から平成、そして令和に至るまで、日本のポップカルチャーにおける「愛される偏屈者」の雛形を作り上げた。